バックナンバー(1999.4)


 

(1999.4.1掲載)

結局上いきやがって(苦笑)

 KSB井上君にキャディをやってもらったんだ。まあその話はまたの機会にするけど、なんか米山がさっそく今週のデサントで僕もやってもらうって言ってた。そういえばが土曜日ずいぶん悪かったんだけど、最終日にあいつ5バーディも取りやがってさぁ(苦笑)

 いやそれがね、土曜日、ちょうどラウンド終わって、パッティングを井上に見てもらってたら亨が来て、今週も賞金ないですよ〜っていうから、じゃあまあご飯ごちそうするからって言って、食事行って、さんざたらふく食べておいてさぁ、結局僕より上いきやがって、ほんっとに、とんでもないやつだよ(笑) もうニコニコ顔だったね。

 さて、今日の飛行機でオーガスタに行ってきます。13日ぐらいに帰ってくる予定。まあマスターズの解説がうまくできるかできないかなんかどうでもいいから、あっこういうこと聞くのは初めてだっていうのをできたらいいなって思う。こういうホールの説明だとか、こういうことは初めてだなぁっていうのを出したいなって思うね。

 で向こうでひょっとしたらオーガスタを回れるかも知れないんだ。たぶん回れるとは思うんだけど、実際回ってみたほうがやっぱり、新しく変わったオーガスタの話もできると思うし、難易度もわかってくるしね。今年は初めてラフが作られたっていう話だよね。ボールがちょっと隠れるぐらいのラフだっていうんだけど、でもオーガスタって考えると、すごく脅威的な難敵だね。


(1999.4.2掲載)

マスターズ解説の方針

 この西遊記を通じて、みなさんからいろいろ解説についてのメールをいただきました。どうもありがとう。内容はあれやこれやでたくさんいっぱいあるんだけど、でもはっきりいって・・・僕のやりたいようにやらせてもらいます(苦笑)

 もちろんいただいた意見は一通り目を通しました。ただその意見を覚えてたり、その意見を言おうと思ったりすると自分らしくなくなっちゃうんで、参考にはさせてもらうけどもはっきりいってあまり期待しないでくださいと(苦笑)

 ただ基本的な方針として、自分だったらどう攻めるか、自分だったらどこからどうやって攻めるか、そして、その画面に映ってる選手が、どうしてそういうような、例えば僕の解説と同じ攻め方をしたら、あぁやっぱりそうでしょうとか、違う攻め方をしたら、彼の考えでいくとこういう考え方でいったんでしょうねとかいうようなことは言いたい。

 ミスをしたらそのミスの第一原因みたいな、要するにその置かれてる状況からくるミスの原因を深く、まあ簡単ではあるけれど深く解説してみようかなと思ってます。

 まあどっちにしても、オーガスタに対する、マスターズに対する思い入れっていうのは深いもんだから、最終的にはしどろもどろになっちゃうんじゃないかっていう気がしてるんだけどねぇ(苦笑) まあそれをメインにして、あとは技術的な話も1つ2つ入れてみようかなぁと。

 アメリカの特徴的な最近の技術的な流れっていうのもあるし、やっぱり向こうの有力選手はほとんどそのパターンでいってるから、もし技術的なことで参考になるようなことがあったら、それも含めて言ってみたいなって思ってるんだ。


(1999.4.3掲載)

東西対抗開催コース

 ちょっと前の話になるけど、今年で6回目を迎えたガン撲滅基金東西対抗。いままで開催したコースは季美の森、浜野、浜野、相模原、大厚木、そして今回横浜。いままで見に来てくれた方に聞きたいんだけど、6回の中でもう1回同じコースでやるとしたらどこが良かったかな?

 懇談会の時には浜野だって言われたんだけど、2番3番とあえて選ぶとトップ3はどこになるかな? 逆にワーストはどこだとか。交通の便とか含めて総合的に考えてみて、例えば去年の大厚木は何が問題点だったかとかね。確かあそこはコースのアップダウンがギャラリーとしてつらかったって懇談会の時に言ってたね。

 交通の便でいちばんつらかったのはどこだろう。やっぱり大厚木なのかな、それとも浜野かな。まあ浜野の場合には車で行く人にとっては悪くなかったらしいね。見る点で言うと浜野か季美の森かな。あのへんはよかったね。

 今年はいままでの中で天候がいちばん悪かった。でも僕は思うんだけど、やっぱりお客さんっていうか、ギャラリーの人が来てくれるのには越したことはないんだけれど、やっぱりこれから先もっともっと充実したいい大会にするためには、もっと試合内容っていうのかな、よりハイレベル、そしてギャラリーがよく見やすいコース、それから交通の便がいいところ、これを加味してやらなければいけないだろうと思うんだ。

 特に今回、僕達がホールアウトして、最後から4組目がホールアウトして、その後が3ホールぐらい空いてたんだよね。だから40分ぐらい来なかったんだ。それで場が持たなくてね。で雨でしょ。冷たい雨だし、誰も来ないし、ギャラリーの人も待っててもたいへんなわけだったんだ。

 で栗田貫一さんに頼んで、林さんの物まねやってくださいってことでやってもらったんだ。栗貫さんまあ知ってるから、気持ちよく「いいよぉ」って感じでやってくれたんだけど、まあほんと栗貫さんと横真と、それから秀道、この3人が、若干でも場つなぎしてくれてほんと助かったね。


(1999.4.4掲載)

次回に活かせばいいじゃん

 今年の東西対抗は、まあこれは個人的に思うんだけど、今回の競技に関してやっぱりあのいざこざっていうのかな、PGAとのごたごたっていうのが悪い方向に影響してるなっていうふうに思った。

 それはやはりギャラリーの方、要するに見る側だけじゃなくて、それを運営する側のPGAのスタッフと新ツアーのスタッフとの間に、やっぱり潤滑油その物が存在しないからやはりぎくしゃくする。それはそっちがやる分でしょとか、これはそっちのほうがやるべきことでしょとか、お互いにやっぱりドライというかドライスティックというか、潤滑油がないから、ちょっとこうぎくしゃくしてた部分があったんじゃないかなっていう気もするんだ。

 仮に天候が良くても、じゃああと何人来たかっていうと、やっぱり1万人は越えなかったと思うね。万が一あのコースで1万人来たら、何ホールか危ないホールがあったし、けが人が出てたような気がする。だから逆にちょうどあのぐらいで良かったかなって気もするんだ、僕はね。

 倉本は6x00人という数字を見て、人数が少ないっていうことに非常にショックを受けてたけど、倉本には、まあそんなにひどく気にするなよと言ったんだ。やっぱりこういうことは続けていくことが大事だし、そこで反省点があれば次回に活かせばいいじゃんって。

 今回は今回で、やっぱり天候とか、こないだまで引きずってたごたごたとか、いろいろな要素が悪いほうに影響してるんだから、そんなに落ち込むなよっていうことを言ったんだけど、やっぱり彼は彼でチャリティっていうものを成功させたいっていう気持ちが強いんだね。もちろん倉本だけじゃなく、それはみんながみんな同じ気持ちだけど。まあ今回はやっぱりマイナスっていうか、アゲンストの風が強かったね。

 観戦した方の声があれば、それを吸い上げて事務局のほうに報告しておくからね。逆に言えばオン・ザ・グリーンや西遊記で、6回の大会の中で、よかったポイント、よかった場所とその場所で何がよかったかとか、あるいはどこどこで何が悪かったかとか、何回大会のここがよくなかったとか、そういう声をある程度いただければ、それを事務局のほうにあげていこうと思ってます。

 さて、まだ静岡とかKSBなんかの話をしてないんだけど、それよりも気になるでしょ、マスターズ。金曜日にさっそくラウンドしてきたんで、明日からはどこよりも早いオーガスタレポートいくよー!


(1999.4.5掲載)

オーガスタのラフ

 さてどこよりも早いマスターズレポート“その1”いくぞー。現地時間金曜日にオーガスタ回ってきたんだけど、新しく作られたラフというのはそんなに思ったよりも深くない。だいたい日本のツアーでいうと、フェニックスのセミラフぐらいかな。そんなにフライヤーするとか、あんまりフライヤーを怖がるようなラフっていうんじゃなくて、どちらかというとまだグリーンに止めることができるっていう感じだね。

 ラフとしては難易度は低いほうだね。ただしやっぱりオーガスタのグリーンに対してだから、そのぐらいで十分なのかなっていうところもあるけど、思ったよりは浅い。ボールが入ってもだいたいボールの上3分の1は出てる。

 むしろフジサンケイとかクラウンズのフェアウェイのほうがフライヤーしてくね。高麗芝の茎が出てるほうが、よっぽど球がジャンプする。そういう点ではまだ楽だけどね。

 今年から2番ホールと17番ホールのティーグラウンドが20ヤード下がったっていうんだけど、感覚的には20ヤード下がった感じはそんなにしない。イメージとしては10ヤードぐらいかなっていうぐらいの感じだけど、数字上は20ヤード下がったというところかな。

 この金曜日のラウンドはティーマークに関係なく、ほとんどフルバックで回った。いやぁ、なかなか、やっぱりマスターズだよ。ベニーっていうこちらのキャディさんがついてくれたんだけど、例えば3カップとか4カップだっていうラインを教えてくれる。わかるんだ、頭では。37年もここでキャディやってるんだから、あなたの言う通りだろう、その通りだ、正しいというふうには頭の中では理解できるんだけど、体がそこへ向けないんだよね。そう見えないんだ、これが。


(1999.4.6掲載)

オーガスタのグリーン

 やっぱりオーガスタのグリーンというのは、そこが独特っていうか、アメリカのツアーの中でも独特なんだね。アメリカツアーの中でマスターズに近いものはあっても、これそのものはない。

 日本でこれに近いものって言ったら、唯一太平洋マスターズだけかな。だから太平洋が年間に1回しかないから、その1回だけでマスターズっていうのがどうにかなるもんじゃないね。だから、たぶんジャンボにしても丸山君にしても、うわぁ〜またこのグリーンだっていうような感じなんだろうね。

 まあそんなこんなでオーガスタ回った、生のいちばんホットな情報を書いたけど、ラフはそれほどでもないけど、影響のあるホールもある。たかだかそれだけのラフでもね。ただし逆にラフができて、グリーン周りでロブショットができるケースもできてきたから、若干それによってプラスになったところもあるかなっていう感じがあるね。

 だから相対的に見れば難易度は上がったんだけど、どこもノーチャンスかっていうと、逆にラフができたおかげで80%難しくなったけど、10%やさしくなったかなという、そういうところがちょっとあったね。

 たぶんトーナメントウィークになったら月曜火曜とグリーンを固めてくるから、まあ条件次第ではあるけど、去年より難しい要素のほうが増えてくる。だから言い換えれば3歩下がって1歩進むみたいなところかな。そういう点ではスコアとしては去年よりは難しいだろうね。

 やっぱりグリーンが硬いかやらかいかっていうのは、ツアープロにとっていちばん難易度が上がるところだから、たぶんマスターズもグリーンが早くなってきて難しくなるだろうね。


(1999.4.7掲載)

キャメロンのスタジオ

 いやぁ金曜日のオーガスタのラウンドはほんとおもしろかったよ。そのラウンドはスコッティ・キャメロンっていうパター作りの人と、現地のメンバーの人2人と回ったんだ。

 オーガスタは普通、マスターズとはぜんぜん関係ない時、例えば秋だとか、あるいはもっと早い時期だとかはメンバー1人が3人のゲストを連れてこれる。

 ただしマスターズに近い、マスターズにあと開幕1カ月とか2カ月ぐらいになってくると、メンバー1人にゲスト1人しか入れないんだ。だから金曜日はキャメロンに対して1人のメンバー、自分に対してもう1人のメンバーという感じで、メンバー2人とキャメロンと僕とで回ったんだ。

 でパッティングの話にいろいろなってね。キャメロンはサンディエゴにスタジオを持ってる。ゴルフのスタジオ。そこではいろんなスイングチェックとかそういうことができるらしいんだけど、ビジェイ・シンだとか、カリー・ウェブ、他に何人もの選手が来るんだっていう話だったね。

 でそこでチェックしていくんだけど、彼らはそこで録られたビデオテープを見て、自分達で判断してくらしいんだけど、パッティングなんかでも自分でカットに打ってるつもりがなくてもカットになってる人とかいるんだってさ。ぜひ来てみたらなんて話をしてたんだけどね。


(1999.4.8掲載)

思わぬ収穫

 オーガスタを一緒に回ったアマチュアの人は47歳と50歳の人で、47歳の人が38-40、50歳の人が40-42ぐらいでラウンドした。スコッティ・キャメロンはパー、ボギー、パー、パー、パー、バーディ、パー、パー、ボギーでアウト1オーバー。インコースがパー、パー、パー、ボギー、パー、パー、ボギー、パー、パーの2オーバーでトータル3オーバー。このスコア、グリーンがソフトとはいえ、オーガスタのフルバックだよ。

 だからやっぱり、日本みたいに細く低いピラミッドじゃなくて、こっちは高く広いピラミッドなんだね。やっぱり底辺がしっかりしてくれないと、それだけ高いピラミッドにならないんだよね。不安定なピラミッドでしかない。ほんと、日本のアマチュアのみなさんがんばってくださいってことだね。

 それはともかく、キャメロンとパターの話をしてて、ビジェイ・シンとかがよくなったパッティングの方法があったんだ。へぇ〜なんて感じで聞いててね。まあ自分はこれでイップスを克服したんだぁなんて話してたんだ。

 でキャメロンがまたいいパター使ってたんだ。シルバーの。で途中でキャメロンから、ちょっとパター貸してって言って、そのパターで打ったの。これがめっちゃくちゃ吸い付くんだ、そのパターが。

 まあキャメロン本人が使ってるパターだしね。でこれと同じやつパターない?すごく当たりがいいんだって言ったら、あっこれ持ってっていいよっていうんだよね。えっ?それは悪いよって言ったら、いい、いい、昔トミーに渡したパターがあるじゃない、あれでずいぶん勝ったでしょって、覚えてんだよね、ちゃんと。

 そのパターはクラシックIのオーガスタウィナーってやつなんだけど、あれでずいぶん勝ったでしょ、だからこれでいっぱい勝ってよって言って、その使ってるパター渡してくれたんだ。

 思わぬ収穫だよ(笑) これ買ったらえらく高いぞ!・・・ってなんでそんなこと考えるんだ(笑) このパター、日本に帰ったらお目見えするよ。


(1999.4.9掲載)

ぜひ守ってもらいたいこと

 もし西遊記を見てる人でゴルフトーナメントにお子さま連れで来る方がいたら、ぜひ守ってもらいたいことがあるんです。守ってもらうっていうとまた、うわっ大変そうだなって思うかも知れないんだけどそうじゃなくて、子供が騒いだら、確かに子供さんに騒いじゃいけないよととか、静かにしてなさいっていうのはしてもらうし、それはけっこうなんだけど、絶対に子供を連れてどっかに行かないでください。

 例えばいま、ティーグラウンドにいたとしても、セカンド地点にいたとしても、グリーンの脇にいたとしても、子供の口を押さえて、抱き抱えて、遠くに連れてくまではしないでください。それは、やってる側からするとすっごくさみしい。すっごく悲しいこと。

 でその子は、ゴルフトーナメントが嫌になっちゃう。見に来るのが嫌になっちゃう。その子はゴルフトーナメントっていうのをどういうふうな見方をしていいかわかんないんよね。特にちっちゃい子は。それなのに突然うるさいって言われて口をふさがれて連れてかれたら、自分はどうしたらいいんだってことになっちゃうよね。その子供達にとって見ればね。

 だから、そういう子達は連れてかれてもものすごく泣くし、よけいひどい状況になるし、まして親にしても子供にしてもトーナメントが嫌になっちゃう。だから静かに見ようねとか、静かに見ようねという一言でいいんだ。

 もしそれで、選手が万が一アドレスをやめたとしても、それはもうその問題はお客様の問題じゃない。ギャラリーの問題じゃないんだ。そこで選手がアドレスをはずして、やり直してミスしても、それは選手の責任。

 で選手もそれが子供にその原因があるなんてことはまず99%のプレーヤーは思わない。僕の想像では99%の選手は、まあ大多数の人間っていうかな、運が悪かった、あるいは自分が至らなかった、こういう状況でもナイスショットできるようにもっと練習してこよう、そういうふうに思うんだ。


(1999.4.10掲載)

お互いが最善を尽くす

 繰り返し言いますけど、ほんと、子供が泣いても絶対に連れ去らないでください。静かに見ようねって一言言えばそれでいいし、それが最善の方法。ぜひトーナメントに来る人、子供さん連れてくるギャラリーの人は、子供さんをそういうふうにして、トーナメントに来たことが嫌な思い出にならないようにしてください。これはもう声を大にして言いたい。

 で、万が一それで失敗しても、ギャラリーの方は、わぁ悪かったっていうふうに自分を責めないで。でも、それぐらいでミスしてたらプロじゃないなんていうふうに思ったり、そんなんでお前プロかよって思うこともないけどね。

 ただし、これはお互いが最善を尽くすことだよね。お互いが最善を尽くして、それで失敗してしまったら、うん残念だった、でも次はがんばってね、っていうふうにギャラリーは送ってくれればいいし、選手は選手で、うん、残念だった、でも今度同じようなケースがあったら、ミスはしないでナイスショットしてこう、そのぐらい練習してこよう、っていうふうに選手は思っていけばいいわけだね。

 こういうことが実際静岡の時にもあったんだ。でもいいんだ。アドレスを外さなければ気持ちが集中して打てないわけだから一回外すことにはなるけど、それはその状況を非難してるわけじゃない。要するにその状況の中で最善を尽くそうとしてアドレスを外すんだね。

 そういう状況の時にお互いが最善を尽くせばそれでいいと思う。やっぱり子供が泣いて、子供に嫌な思いをさせるのがいちばんさみしい。だからこれはほんと僕からのお願いとして、西遊記の読者の方々には守ってもらえればと思います。


(1999.4.11掲載)

わかりやすいかなぁ?

 昨日一昨日とゴルフ場に連れてくる子供さんのことを書いたんだけど、誤解があるといけないからちょっと補足します。こちらサイドの責任だからっていうところがあったんだけど、その状況は運が悪かった、そしてそれに対して対処することを考えるわけだよね。そしてもし失敗したとしたら、それは今度は自分の中でもナイスショットを打てるように努力しようと思うってことなんだ。

 騒がれて泣かれて、それを親御さんが止めたとしても、後はこっちの問題だじゃなくて、そういう場面自体が運が悪いっていうことがあって、それはしょうがない、だからあとはこちら側が引き受けるよと。子供さんが騒いで、あとはこちら側が引き受ける、という感じじゃなくて、そういう状況その物がバッドラック、でもそこから先はこっちががんばるよっていうことだね。伝わるかなぁ。言葉としては間にワンクッションほしいということなんだけどね。

 さてそれはともかく、マスターズのテレビ中継わかりやすいかなぁ? そんなに難しい技術的な解説してもわかんないよね。例えばノーマンのここがこう変わってああ変わってとか、そういうのはほんとに小さなチェックポイントだから言ってもわからないと思うので、極力わかるぐらいの範囲で言ってるんだ。

 でも、子供の頭を越えて向こうに届くぐらいですよとか、なかなかだったでしょ(笑) 2日目のオラサバルの、15番ホールの奧からアプローチなんて、言った通りぴったりでしょ(笑) あれは8、9番アイアンあたりでやったらしいんだけど、ちょうど2、3メートル手前からとんとんとんという感じですよというふうに言ったよね。でやっぱりとんとんとんというような言葉出ちゃうんだよねぇ。でもそのほうがわかりやすいよね?

 でもほんとも予選通ったしよかったよね。2日目のスタート前に、69出せばワンチャンスあるぞって言ったんだ。まあ69でも70でも風強かったからチャンスあるぞと。あとはほんと2日終わって、油断しないでがんばってくれよって感じだね。


(1999.4.12掲載)

すっごいチェック

 しかしつまんないよ、ロープの中じゃないから。やっぱりプレーしてるほうが楽しいね。つまんないって言葉はちょっと変だけどね。解説も楽しいけど、プレーするほうがぜんぜん楽しいってことだね。

 放送席のお二人はもうほんとに熱意のある方だから、ついついたくさん言葉が出てくるんだ。だから極力しゃべらないように心がけてるんだけど、僕がしゃべんないと2人がどんどんどんどんしゃべる。だから僕が話す時には両手で2人をさえぎって話したりするんだ(笑)

 しかし言葉遣いが若干、うんそうねぇ〜とかなっちゃうのはご愛敬で許してもらうしかないかな。そうですねとか言えればいいんだけど。これはいちばん最初に注意されたところなんだけど、そんなこと言ったって僕は知らないって言って今回やってるのよ。自分の方法で、自分のしゃべり方でやるよって(笑)

 今回マスターズで感心したのは、携帯電話が全部チェックされて没収される。中に持って入れない。電源切るとか切らないとかいう問題じゃなくて、入場者全員、空港で入るゲートみたいなのででチェックされて、そこで預けるんだ。中では一切持ってちゃいけない。だから電話の音が1つもないんだね。

 その他、入る時は、いちいち持ってるバッジを機械に通すんだ。クレジットカードを払う時にピッと通す機械があるよね。ああいう感じの機械を通す。で、もしそこで不正に仕入れたバッジ、要するに偽造バッジがあったら、そこですぐチェックされる。誰が売って、どこで買って、誰どうだとか、全部いもづる式に出てくるんだ。すっごいチェック方法だよ。僕達はテレビのバッジ持ってるんだけど、放送関係者であろうとも毎日毎日玄関を通る時にチェックされる。いやぁすごいね、マスターズは。

 ちなみに書いておくと、マスターズのギャラリー収入は1日1億円だって。1週間で7億円。7億円のギャラリーチケット収入、それにプラスアドバタイジング、売店だとかそういう物を含めて、全部で10億円以上。放映権その他すべて含めると30億円近くいくらしいよ。


(1999.4.13掲載)

ちょっと悪い物が残ってる

 ずいぶん遅くなったけど静岡オープンの話をしよう。まあ静岡オープンは予選落ちで終わったんだけど、非常にいいものも出るけど、悪いものも出るという状態だったね。まあ東建の初日は風が強かったけど、天気のいい日、要するに雨も降らない、風もめちゃくちゃ強くない、そういう状況だといろんなオフシーズンに井上君とやってたことがいいほうに出る。だけど、静岡みたいに天候が悪くなってきて、雨になった時なんかだとやっぱりまだいいものも出るけど、悪いものも出るという感じだったね。

 静岡へ行った時は、まだ東建の最終日最終組という、その居場所に落ちついたという雰囲気を持ち続けてた。で初日はすごくいい天気で、初夏みたいな、初夏っていったらオーバーだけど、春まっさかりみたいな天気で、半袖でちょうどいいっていう天気だったね。初日は8番ホールまでで4バーディ1ボギーの3アンダー。あぁやっぱり調子は本物だぞっていう感じがあったんだ。

 でも東建の最終日に少し球が右にすべってたんで、火曜水曜と井上君とちょっとチェックをしてたんだ。東建の始まる前と東建が終わった後では、技術的な誤差がちょっと出てたんだね。シーズンが始まる前はこうなってたけど、1試合やってきたらちょっとこういうふうに戻ってますね、っていうところがあったと。

 で、それをちょっとチェックし直してスタートしていって、物の見事に決まって、もうOKバーディみたいなやつだとか、ドライバーもよく飛んでたし、よかったんだ。だけど、9番10番11番ホールと、逆に右行かないで、つかまえすぎて左の林に入って3連続ボギー打っちゃった。うわーって感じで、一挙にまたイーブンパーまで戻った。

 17番ホールではホールインワンみたいな、ほんとピンそば50センチみたいなショット打って、1アンダーで初日は終わったんだけど、まあ5バーディ4ボギー。ボギーが4つあったことで、あぁやっぱりちょっと悪い物がまだ残ってるなっていう感じを持ったというのが正直なところだね。


(1999.4.14掲載)

やっぱり正解だよね

 静岡の2日目の、あの台風のような雨は参った。うわーこれは余裕ないぞっていう感じでね。東建の最終日も雨の中で球が、例えば17番なんかでも右にずれたように、何ホールか右にはずしてったのがあったんだけど、逆に静岡の時には左左左のオンパレード。

 ドライバーなんかだといいんだけど、特に2アイアン、スプーンで打つような、要するにレイアップするようなミドルホール、ティーショットでドライバー使えないようなホール、アイアンで打っていかないといけないようなホールで、もうひどいところばっかりいっちゃって、ボギーの山を築いちゃったね。

 つかまりすぎたなぁ・・・つかまりすぎたのはどこに原因があったのかなぁという感じだった。で予選終わって帰ってきて、金曜日の夜もビデオを撮りながら練習したり、鏡を見ながら練習したりしてたんだ。まあ金土日と3日間、井上君とも電話のやり取りをしながら、こうじゃないかああじゃないかという感じで打開策っていうか、発展策っていうのかな、それを見つけてたというところだね。

 しかし、静岡はずーーと天気が悪かったね。あそこまでいくとかわいそうだね。で難しいもんで、金曜日はすごい天気だったんだ。サスペンデッドになって、ひどい選手になると残り2ラウンド近くやらないといけないような選手も出てきたんだけど、いっそのこと2日目を中止にして、土曜日やって、最終日36ホールやる、それでも72ホールだよね。そのほうがいいんじゃないかなとも思ったりもしたんだ。

 だけどこういう天気になると、ほんとにやれるだけやっといてよかったんだなというのが正直なところだね。じゃあ土曜日できたのかっていうと、土曜日もきちんとできないような天気だったし、へたしたら日曜日だって、途中でサスペンデッドになるんじゃないかっていうような雲行きもあったしね。

 ほんとにまあこういうことは試行錯誤をこれからも繰り返していくんだろうけど、1ホールでも消化していくっていう新しい基本方針、絶対的な方針じゃないけど、基本の方針として1ホールでもプレーしたホールはそれを生かすと。そういうような方針っていうのは、こういうケースになるとやっぱり正解だよね。


(1999.4.15掲載)

プロ、ボールないんですけど……

 静岡で予選落ちして帰ってきて、土日井上君と話をしながらいろいろやってる中で、井上君にKSBのキャディをやってほしいと頼んだんだ。キャディだったら実戦の中でアドバイスできるしね。ちょうどいい大会だし、もしよかったらキャディやってくれないかって言ったら、彼が土日はだいじょうぶですよいいですよって言うから、じゃあ頼むよってことになった。

 でそのKSB。木曜金曜は地元の元研修生で、うちの研修生じゃなかったんだけど、元々プロを目指してた男の子で直原君っていうのがいるんだけど、彼にキャディをやってもらった。で土曜日曜は約束通り、コーチの井上君にキャディをやってもらいました。でもやっぱり井上君っていうのはプロのツアーのキャディをやったことなんてないわけだよね。これが初めてだから、もうすべてプロまかせ(笑)

 傑作だったのは土曜日のスタート前にパッティング練習してたんだ。そしたら係員の人がたーーと走って来るんだよね。で、あれ?どうしたの?って言ったら、プロ!もうスタート時間2分前です!!って(苦笑) で慌てて行って、ティーグラウンドに上がったのはスタート時間の1分前だ(苦笑)

 で、井上君ボールって言ったら、もうバッグの中探しまくっても見つからないんだ。プロ、ボールないんですけど・・・って。ボールがない!?もうスタートだぞ!(苦笑) そんな感じでボール探してるうちに、はいそれではスタート選手をご紹介します・・・ってアナウンスされてさ、もう打たなきゃいけないでしょ。もういいからパッティングボールでいいからボールを貸せって言って、さっきまでパットの練習してたボールで、素振りもそこそこにパチーンと打ってった(苦笑)

 結局ボールはバッグの中にちゃんと入れてあるから、最終的には探し当てたんだけど、どこのチャックに入ってるかわからなかったんだね。もうすごかったよ(笑)

 クラブなんかもロングアイアンの中にショートアイアンは入っちゃうし。普段キャディバッグの中は振り分けてあるんだ。[ドライバー・スプーン・パター][2・3・4、5・6・7][8・9・ウェッジ・サンド2本]という感じで。でももう何ホールか進むうちに2番アイアンの横に9番アイアンはあるわ、ピッチングウェッジの横に3番アイアンはあるわ、なんだこりゃ?って感じでもうめちゃくちゃになってるわけ。井上く〜ん、たーのむよ〜って感じだったね(笑)


(1999.4.16掲載)

感覚的な誤解がある

 昨日は笑い話ばかりになっちゃったけど、なぜ井上君を使ったかというと、彼には火曜日水曜日と見てもらって、で初日もちょっと見て、それから次の試合っていう形になってるんだけど、やっぱり自分でどうしても納得いかなかったところが、例えば東建でもあったんだ。

 自分のスイングの中で抱えてる嫌な雰囲気っていうのがあるんだけど、それがなんで出るのかっていうのを、ゴルフコースでキャディバッグをかついで出てくるキャディだったらいちばん近くで見れるわけだし、ルール上アドバイスもできるわけだね。まあアドバイスはともかくとして、井上君ちょっとかついで、その原因を見てくれないかということになったと。

 シーズンオフの練習でやってきたことが、トーナメントになってきたら、どう練習場と技術的に変わるのか。それを見てほしかった。でやっぱり実際あったね。そのポイントとなるものが2カ所あった。練習場ではこれは出てなかったという問題点がはっきりと浮き彫りになったんだ。

 で、KSBの3日目が終わって、練習場で打つ練習してみて、自分としてはそんなふうにはやってるつもりがないことなんだけど、ほんとにこれか?っていうような感じなんだ。で実際そういうふうに自分が感じたとしても、周りの人からはそうは見えない。要するに中嶋プロが思うほど、そんなに極端にはなってないと言うわけ。で実際感じるほどそうはなってない。だから自分の中ですごい感覚的な誤解っていうのがあるわけだね。

 例えばわかりやすく言えば、低いボールを打つとする。これはアマチュアの人でもハンデがそうとう上のほうに行かないとわからないと思うんだけど、低いボールを打つのに球の位置を右に置いて、体重を左に置いて、上からばしっと打ったら低い球が出る。例えば7番アイアンや8番アイアンでも右足の踵の内側ぐらいにボール持ってきて、体重を左足において上からバチンと叩けば、低いボールは出る。

 でもこれはスイングじゃないんだね。ハエ叩きと一緒。右足の前に止まったハエをハエ叩きでバチンと打つのと一緒だよね。これはスイングじゃない。でもコースではスイングをしなければいけない。これはたぶん清水さんぐらいのレベルじゃわからないだろうなぁ(笑)


(1999.4.17掲載)

2種類のイメージトレーニング

 もうちょっと詳しく書こう。ゴルフコースに行ったらスイングをしなきゃいけない。要するにクラブを振らなきゃいけないんだ。ボールにぶつけて終わりじゃなくて、スイングしなきゃいけない。そうすると低いボールを打つ時に、右にボールを置いてバチンと打ったら、右足の前にハエを置いてハエ叩きでバチンと打ったら、これはスイングじゃない。素振りしただけ。

 じゃあボールの位置を変えずに低いボールを打つとしたらどうしたらいいか? スイング中に歩いていくわけにはいかない。ということは、ウェートが完全に左に乗ってく方法しかないんだ。スイング中に足を動かすわけにいかなかったら、体の中でウェートシフトがしっかりできなきゃダメだよね。

 この感覚はみなさんにぜひ持ってもらいたい。これはもうイメージトレーニングの1つ。イメージトレーニングっていうのは2種類あって、例えばニクラスのスイングがいいなと思ったら目をつぶってニクラスのスイングを思い浮かべる、あるいはタイガーがいいなと思ったらタイガーを思い浮かべる、あるいは中嶋プロがいいなと思ったら中嶋プロを思い浮かべて、そのスイングをビデオで見るように見る。これが1つだね。

 でももう1つのイメージトレーニングというのは、ちょうど自分がスイングしてる時の肉体の中の、筋肉の動きを感じるんだ。これは上級者になればなるほど、本当に筋肉の中の電圧というか、ほんとに筋肉がそういうふうにすこーしながら動いてる、そういうイメージをする。筋反射っていうのかなぁ。反射っていうよりも筋肉の中で実際の変化があるわけだけどね。

 だからイメージっていうのは、まるでビデオを録ったスイングを見るような方法と、もう1つ、肉体が動いてる感覚、それをイメージする方法の2通りあるんだ。


(1999.4.18掲載)

それを探したくて

 話がちょっと横に脱線してるけど、もうちょっと続けます。例えばこう考えてみたらわかるかも知れない。お風呂のお湯をイメージしてください。お風呂のお湯が湯船いっぱいになってる。で、お風呂に足を入れた時の感覚ってわかるよね。

 2種類のイメージトレーニングというのはその2つのことを言ってるんだ。お風呂のお湯を見る、お風呂に入ってる人を想像する。でもお風呂に入ってる人を想像する時に、お風呂に足が入ってく温度変化っていうのを足が感じるよね。

 それと同じように、上級者になればなるほど、スイングをイメージした時に、自分の体が動いてるっていう筋肉の感覚が、お風呂に入った時のように出てくるんだ。目を閉じてスイングした時に、自分でボールを打つ時の体の動き、筋肉がわかる。

 話を戻すと、左に体重が移っていくってことが、もう1つの低いボールを打つ方法なんだ。野球のピッチャーもそうだけど、やっぱりボールに自分の体重がよく乗った、要するに伸びのあるボールを投げるのと同じように、ゴルフも自分の体重がしっかり乗った、伸びのあるボールが出るほうがいいわけだよね。

 だからコースに行った場合に、その体重がボールによく乗ってくっていうのは、ボールを右足のほうに寄せて、上からバチンと叩くんじゃない。そういう打ち方ではたとえ風に負けない低いボールが打てたって、それは方向性が悪くなるだけ。ピッチャーに置き換えれば、本当のクリーンナップには打たれてしまうボール、あるいはフォアボールを出してしまうしかないボールになる。バッターを打ち取れない。

 そのへんっていうのがKSBの時に井上君にキャディをやってもらって、土曜日終わって、コースではこういうふうになってるんだけど、それが練習場では出てこないっていうポイントだったっていうか、わかったんだ。それを探したくて彼をキャディに使ったんだけどね。


(1999.4.19掲載)

糸を引くようなボール

 昨日のお風呂のたとえがちょっとわかりにくいんで補足すると、2種類のイメージというのは、1つはお風呂に入っていく人を想像する、それからもう1つはそのお風呂に入っていく時に足で感じる温度を想像するっていうことね。でゴルフの場合、上級者になればなるほど、後者のほう、つまり自分の体の中のことをイメージできるっていうことなんだ。

 で、そういうポイントが井上君にキャディをしてもらうことでKSBの3日目に発見できたわけだね。で、ラウンド終わった後、打ち込んで練習した。でもそれを1日練習してもやっぱり、最終日の1番ホールは危うくOBって感じで、まあ結果はセーフだったけど。そこからセカンドを3メートルぐらいにつけたけど、3パットしてボギーだった。

 で次の2番ロングホールも危うくOBだった。3番ショートホールはまあ乗っかってパーなんだけど、4番ホールがOB。やっぱり何ホールかかかったね。

 こういうことで試合はできるのか、1日前につかんだことをやっぱり、もう少し自分にしみこませてからやりたいけど、時間がなんたってなかったからね。昨日の今日だからね。でもそれをやったら、それ以上に自分の体の中に、筋肉の中にいい感じが出てくるんだ。

 でその4番ホールのOBである程度ふっきれる。そこで逆にふっきれるから、5番ホールのティーショット、6番ホールのティーショット、7番ショートホールはもうOKバーディぐらいについて、9番ホールのティーショットもナイスショットっていう感じだったね。

 インに入ってからも12番ショートホールもナイスショットして1メートル半ぐらいについた。パットははずしちゃったんだけどね(苦笑) とにかくその後12番ホールもOK、13番ホールもOK、14番ホールもOK、15番ホールもOK・・・OK、OK、OKだったね。特に14番ホールのアゲンストの中のセカンドショットっていうのはほんとよかったね。久しぶりに糸を引くようなボールが打てたっていう感じだった。

 それが17番ホールでも出た。17番ショートホールは4番アイアンで打って、ピン右手前1メートルぐらいにつけてバーディ取ったんだけど、こういうスイングの感覚っていうのはここ何年間か出てなかったんだ。確かに東建の時もいい振りはしてたんだけど、今回みたいに自分の中で糸を引くような感覚ってのはなかったんだ。


(1999.4.20掲載)

心に残るフィーリング

 自分の技術がない、あるいは自分の技術が不確定なものなのに自信を持つというのは、やっぱり本当ではない。自分の技術よりもいいスコアを出す。要するに自分が70しか出せない技術しか持ってないのに68を出すためにはメンタルが必要。

 プラス思考といって一打一打に対して、最適な緊張感を保ってく。緊張しすぎてもダメだし緊張しなくてもダメ。そういう時に緊張感が足らないと思えば自分で緊張感を出していくし、緊張感が強すぎると思えばリラックスしていく。そういうメンタルのほうのテクニックを使う。それによって70で回れる調子じゃなくても68とか69で回れる。

 でも65で回れる実力や調子があれば、そのメンタルをクリアすれば63、4が出るわけだね。だからやはりポテンシャルの高い、数字の高いところでゴルフをしようと思ったら、メンタルだけでは不可能なんだ。

 そうだよね? だってメンタルだけでできるんだったら、ゴルフ好きなメンタルトレーナーは全員アンダーパーで回れることになっちゃう。そうはいかないよね。やはり技術っていうのも、たくさんの練習とたくさんの正しい情報の中で、最適の練習をしていかなきゃいけない。だからこれは、人間とかく精神論とか、そういうところに逃げがちだけど、必ず両方が必要だってことなんだ。

 で何日か前に感覚的な誤解があるって書いたけど、要するに違和感があるから、その違和感をつきつめていきたいんだよね。例えば低いボールを打つのに右足の前にボールを置いてハエ叩きでボールを打つのと、ボールの位置を変えずに体重の乗りで低いボールを打つのとでは違うんだと。

 右に球を置いて低いボールを打って、それが3メートルについたとする。残り170ヤードのやや強いアゲンストの中を5番アイアンで低いボール打ったら、それがやっぱり3メートルについたとする。両方とも3メートルにつきましたと。でも3メートルという結果は同じだけど、170ヤードのアゲンストの中で3メートルについたのとでは、心に残るフィーリングが違うんだよね。


(1999.4.21掲載)

スイング見たらびっくりするよ

 みなさんがゴルフ場へ行った。で、ロングホールに来た。ゴルフ場に行って、あるロングホールでドライバーをぱーんと打って、たまたまセカンドもぴったりついて3メートルのイーグルチャンスについた。これは、ドライバーもナイスショットを打てて、セカンドもナイスショットを打てて、そして3メートルについたら、気持ちよくその3メートルに向かっていけるよね。ということは入る確率が高くなる。

 ところが同じ3メートルという数字でも、カップまで3メートルでラインも同じように上りでまっすぐのだったとする。だけど、それがグリーンのエッジから6メートルしかないアプローチが3メートルしか行かなかった。そして3メートルのパットが残ったとする。この3メートルというパットは同じパットだよね。上りのまっすぐの3メートル。だけど、片方は気持ちよく3メートルのパットを迎えられるし、もう片方はなんであんなエッジからすぐそこなのに、なんでこんな半分しか来なかったんだっていう感じになるよね。

 それが心の中の違和感っていうことなんだ。その違和感を、僕はいいかげんにはできないんだ。それを直したくて、それをクリアにしたくて井上君と契約したんだからね。それが自分のシーズンオフの練習の中で、まあ確かに忙しかったこともあるけれど、それなりに自分であっこれだっていうものをつかんで東建に行って、それで手応えがあった。でも違和感がある。

 それがやっぱり最終日の崩れであり、あるいは静岡の初日の8番終わって3アンダーから結果的に予選落ちすることにもつながったし、やはりその違和感っていうものが自分の中でもうとことん残っていく。

 だから嫌だった。だから静岡終わって、KSBの週の岡山に行く週の月曜日に、井上君悪いけど土曜日曜キャディやってくれないかって言ったら、えっいいんですか? 僕いいですよっていうから、じゃあやってくださいよって言ってやってもらったと。でもほんとやってもらってよかった。

 いやぁでもほんとびっくりするよ、今度スイング見たら。プロ変わったなぁ〜って。まあ大きく自分を改善できるのも春先までだからね。やっぱり今のうちにほんとの基本路線を決めたいね。


(1999.4.22掲載)

悔いの残った言葉

 先週のつるや直道が優勝したわけだけど、まあ直道はアメリカでずっとがんばってきたってこともあるけど、役者が1つ上だったって感じかな。でもその他、若い選手が上を占めたからよかったよね。後はベテランがどこまでがんばるか。僕も今週から加わるしね。

 いやぁそれにしてもやっぱり解説っていうのは疲れるねぇ。ほんとこの場を借りて、西遊記のみなさまにお伝えしますけど、やっぱりマスターズの解説を今回受けて、結果的にというか、後になってみればやってよかったかなというのが正直な印象なんだけど、もうちょっとこれも言いたかった、でもこういうのは言いたくなかったっていうのが両方入ってたね。

 だから自分では、あぁこういうのは言いたくないなっていうような、例えば丸山選手が予選を通るか通らないか、ちょうど当落線上にいたわけだね。初日78も打って、やっぱり予選通らないかも知れない。ある意味では切れて、もう2日目もいいかげんなプレーになりがちなところだけど、中嶋プロも何回も来て、このコースやっといいスコア出るようになったんだよってことを伝え聞いたらしいんだ。

 まあそれもあったんだけど、どっちにしてもいいスコアで回れるか悪いスコアになってしまうっていうのは気持ちの持ち方一つだよね。でまあそれがいいスコアで、彼なりにオーガスタの中でベストスコアで回ってきて、でアンダーパー出して予選通るか通らないかというそういう中で、気持ちとしてもやっぱり日本人で、彼も日本の選手だし、応援したくなる気持ちがあった。

 まあそんな中でワトソンが16番ホールで右のバンカーに入れた時に、やっぱり自分と同じプロスポーツ選手、同じ現役の選手として、まあ年はワトソンのほうが少し上だけど、いやぁワトソン、こんなことを思ってはいけないけれど、ワトソンさんお願いしますよ、ここボギーでもよしとしてください、というような感じで言ってしまった言葉っていうのは、やっぱり自分でもすごく悔いが残ってるね。


(1999.4.23掲載)

もう一度あの感動を……

 マスターズの解説、逆に言うともっと言いたかったこともある。例えばノーマンの12番ホール、あるいは最終日のバックナイン。ノーマンが自分としては100%の自信じゃなくて、しかもあそこまでケガからカムバックしてきた。オラサバルにしたってそうだよね。

 そういう一つのプロ選手、あるいは男と男としての、あるいはスポーツマンとしての戦いを見る中で、もっともっと自分の表現が足らなかったかなという部分もあった。でもそんなつまらないことも一切なしで、個人的な意見、解説とかそういうものは別にして、黙ってそのトーナメントを見るってことがいちばんいいのかなとか、いろんな思いが交錯したマスターズの解説だったね。まあ自分としては至らなかったっていうのが正直な感想だね。

 ただし解説者としては至らなかったけど、自分にとってはオーガスタに行って、ラウンドできて、しかもマスターズの解説ができたってことは、自分のゴルファー人生の中ではよかったかなと思う。これから先、もう一度あの感動っていうか、まあとかく忘れてしまいがちな夢とか希望とかっていうのをもう一度思い起こさせられたっていう意味ではよかったね。

 インターネットでもいろいろよかっただとか悪かっただとか、いろんな意見っていうのがあったけど、やっぱり100人いたら100人の感じ取り方っていうのは違うわけだから、その100人の人みんなに好かれるっていうのは無理な話だよね。

 だから松下さんについても、現場のスタジオに行ってみればわかるんだけど、いろんな時間的な制約、それからその実況として、ほんとに秒単位っていうか分単位での中で切り盛りしてた難しさっていうのは実際あったんだ。

 でほんと彼も全力投球でやったし、岩田さんも一生懸命やったし、僕はほんと二人に助けられて、自分の至らなさっていうのをカバーしてもらえて、ありがたかったっていうのがほんとに正直な印象だね。


(1999.4.24掲載)

桁違いだね

 いやぁしかしアメリカのアマチュアの選手のスケールっていうのはすごくなってるね。ハンク・キーニーなんて、13番の左の林を全部越えてっちゃって、残り105ヤードだって言うんだ。

 それがどのぐらいすごいことかっていうと、例えばそうだなぁ、話はオーバーになるけれど、東京タワーのてっぺんから打ってレインボーブリッジまで届くようなイメージとでも言うのか(笑) まあそれは非現実的なたとえとしても、例えば東京方面で言うと、日本シリーズをやる東京よみうりの3番ホールでグリーンにワンオンしてしまうとかいう感じかなぁ。

 あるいは九州で言うと、ダンロップフェニックスで例えれば最終の18番ホールのセカンドをピッチングウェッジで打ってしまうような感じ、まあピッチングはオーバーだけど8番アイアンでは打てるだろうね。フェニックスというと13番ホールの左ドッグレッグのワンオンしそうなミドルある。毎年何人かトライしていくけど、あそこだったらほんと2アイアンでいいかな。スプーンじゃオーバーだろって感じだね。

 北海道で例えて言えば、全日空オープンやる輪厚でいくと、17番ホールの左ドッグレッグのロング。あのホールのセカンドをやっぱり8番か9番アイアンで打っちゃうんじゃないかっていう感じ。もう桁違いだね。

 彼らっていうのは、まず直線の距離を出して、それから左右のブレを少なくして、最後に前後のブレを少なくしてくるっていう、そういうゴルフの組み立て方をする。ただし、それは体がある選手ね。

 これに対して体がない、例えばペイビンだとか、ジェフ・スルーマンというような選手っていう、そういうタイプのゴルファーだとまず方向、それから前後のブレ。そして自分がその中で常に体のコンディショニングを維持して、最後に自分の持ってるものの中でマキシマムを出そうとするね。


(1999.4.25掲載)

一段と難しくなった

 今日は海外の選手の使っているクラブについて書いてみよう。向こうの選手のクラブの特徴的なことっていうのは、やっぱりキャビティが多くなってきてることだね。キャビティが全体の80%近く、マスターズ出場選手の80%ぐらいを占める感じだね。ただ、やっぱり普通のトラディショナルな、いままでの旧型のタイプを使ってる選手もたくさんっていうか、それなりにいた。

 まあどちらがいいかっていうのは完全に個人個人の好みの違いによってくるね。風の中でもちゃんと重たい球を打ちたいのか、あるいは風があってもボールがやさしくつかまってくれるほうがいいのか。そのどちらを選ぶかによってずいぶん違ってくる。

 逆にもっとはっきり言えば、自分はスイートスポットを絶対外さないんだというタイプの選手、例えばタイガーみたいに、スイートスポットに当てられる自信のある選手っていうのは、普通のいままでのタイプを使うし、多少ブレてもおおざっぱにいきたいっていう選手はキャビティを使ってくる。だいたいそういうふうな分かれ方をしてる。

 あとマスターズで気づいたことは、ほんとにより一段と難しくなったこと。大会が始まって、風が吹いたらもうこんなピンは絶対に寄らないぞっていうところがある。例えば最終日の11番ホールだとか、14番ホール、17番ホールなんていうのはもう、なんだこれぇ〜っていうようなとこだったね。グリーンが硬くて、しかもこぶの上ワンピン。こぶの上ワンピンって言ったって、こぶの上は平らじゃないからね。ダウンヒルになってる。そのこぶギリギリに落ちたって絶対に7、8メートル奧までいってしまうっていうようなセッティングなんだ。

 たぶんこれを日本でやったら、ほんとに選手からブーイングが出るだろうね。でも正直なところ、中嶋個人として正直に言えば、やっぱりメジャートーナメントっていうのは絶対に寄らないピンがあるんだよね。


(1999.4.26掲載)

より強くなるために

 絶対に寄らないピンというと、例えばセントアンドリュースの12番ショートホール。このショートホールはものすごいところにピンが切ってある。右のバンカーを越えたところで、しかも風はフォロー。アゲンストになっててもそこにはまず寄らないっていうところだね。アゲンストになってたほうが寄りやすいんだけど、ほんとに全英オープンの中ではよくそこで何組かつまるね。

 テレビ中継も朝から晩までずっとやってるから、だいたい映されるホールなんだけど、まず8メートル以内に寄ったのは見たことない。そういう中でまあロングパットが入ってバーディっていうのはあるんだけど、マスターズなんかそんなホールがある。それに対して選手自体は、今回のピンの位置でもグリーンの硬さでも、クレームを出してないんだ。

 これはちょっときついかなというのもあるけれど、現実にこれだけクラブと道具が進化して選手に有利に働いてるのに、ゴルフコースがやらかくて止まって、寄るようなところにピンが切られてたら、それこそ25アンダー30アンダーっていうスコアが出てしまうわけだね。そうなってくると、はたしてそれで自分達の技術力アップにつながるのかと。そういうことを選手はしっかりと理解してる。

 今回オーガスタを回った後にTPCソーグラスも行ったんだけど、少なくともコースがフェアなんだ。例えばフェアウェイの刈り方、それからフェアウェイの芝生の状態、それからラフの状態、それからセッティング。要するにコースを回る上でのすべてのセッティングが、これだけやってるから文句ないだろうと。そういう中でやるから、選手全員が理解してるっていうのかな。上達するために何が必要なのか、自分達がより強くなるために何が必要なのか、そういうことを理解してる。

 日本選手、あるいは日本のツアーっていうのは、そのフェアウェイあるいはコースのセッティング、先週のつるやでもディボットとか、荒れてるところがずいぶんあったっていう連絡があったんだけど、結局そういう中で、ピンの位置だけ、あるいはグリーンだけいじってもなって思うんだ。基本的にグリーンは作りやすい。ティーからグリーンまでの間のセッティングで言えば、グリーンがいちばんやさしいんだね。


(1999.4.27掲載)

ツアーにまず求められること

 コースのセッティングではグリーンがいちばんやさしい。グリーンの中でピンの位置を難しくとか、ピンの位置をああだこうだ、あるいはグリーンを硬くだとかできるんだけど、そこまでにいたるフェアウェイ、あるいはラフ、バンカー、そういうすべての要素があって初めてそのピンを狙わせていく、あるいはそのピンに対してどう攻めていかせるかということになるわけだよね。

 例えばそれが1メートルのバーディチャンスだとしても、あるいは8メートルのバーディチャンスだとしてもどっちでもいい。要するにアメリカはそういうマネージメントがちゃんと組み立てられるコースにセッティングしてくれるからいいんだけど、日本ではそれができてない。それが得てしていきおいグリーンだけに偏ってしまう。だから見る者をもっともっとつまらなくしてしまう。

 だからそういう点でこれから日本のツアーにまず求められることがある。器が変わった。日本ゴルフツアー機構に変わった。その次にやっぱり、このツアーをちゃんとビジネスとして盛り立てていってくれるビジネスマンをこのツアーに入れるべきだと思う。

 ちゃんとプロゴルフツアーのビジョンを持った、そしてそれがみんなの支持を得られるビジョンを持った人、そういうビジネスマンが入るべきであって、その人が当然島田幸作さんと手を携えてやってくべきだよね。そしてまずコースのセッティング、それからそういうトータルなフィールドの整備。これをしないとやっぱりダメだね。

 で話は最初に戻るけど、グリーンは2週間で仕上げられる。極端に言えば。それまで徐々に徐々に作っておくけど、最終的に2週間から3週間でできる。でもフェアウェイで切り取ったターフっていうのは2週間じゃ戻ってこない。

 そうすると砂をかぶせるだけなんだね。砂をかぶせたところからバンカー越えのギリギリのピンの位置は狙ってかないよね。じゃあそういう芝生っていうものをどういうふうに保護していくか。そういうことを考えていかないといけない。


(1999.4.28掲載)

どんどん差がついていく

 ゴルフ場というのは当然アメリカだって一般営業はしてるわけだね。その一般営業の中にツアーが入っていく。ということは、その一般営業がツアーの中で最小限にくいとどめられる方法を取ってるわけだ。

 USツアーのトーナメントが入ったからといって、そのツアーのために1カ月も2カ月もそのゴルフ場をクローズするわけにはいかない。でも選手からすると、その一般営業による悪い影響っていうのは最小限にくいとどめられてる。日本はそれをマネするべきだね。取り入れるべきっていうのかな。そうしないとどんどんどんどん差がついていく。

 例えばマスターズなんていうのは、日曜日までオーガスタにお客さんが入ってるんだ。始まる週の日曜日までお客さんが入ってる。ただそのティーグラウンドや練習場にしても、いちばん先端を使わせる。芝生の上からでもいちばん先端だから、トーナメントが始まった時に、選手が要するにディボットの跡がないところから練習ができるわけだね。

 それからアプローチグリーンでもアプローチグリーンのエリアを決められてくるから、まず選手が打つところは非常にクリーンな状態になってるんだ。そしてトーナメントもティーマークの位置がずいぶん変わってくるから、ティーグラウンド上にディボット跡がない。

 それからもう一つ、入場者制限をしている。マスターズの場合、トーナメントが始まる3カ月前までは1人のメンバーに対して3人のビジターが一緒に回れる。これは日本と同じように、1組に1人のメンバーがいればいい。ただし大会が近づくにしたがって、1人のメンバーにたいして1人しか入れなくなる。

 日本で置き換えれば、普段はメンバーの紹介でだいたい回れるよね。メンバーが紹介してゴルフ場予約してあげてね。まあそういうゴルフ場じゃないところもある。メンバー同伴が必要なところもある。だけど、メンバー同伴が原則ではあるけれど、メンバーの紹介でも回れるのが日本の現実だよね。

 ということはやっぱり、それだけお客さんがたくさん入れば入るほど、フェアウェイが荒れてくるわけだ。そうなってきたら、メンバー同伴でなければ回れませんよっていう形にするのか、あるいは1人につき2人までですとか、そういう方法を取ることができるわけだよね。


(1999.4.29掲載)

名場面ができない

 先週の自分のゴルフのことは言いません。悪いと言って、グチを言うのもやだし、いいわけをするのもやだし。やっぱりいい報告の時に、ここをこういうふうにしてよくなったんですよ、ここがこうなってこういうふうになってきたんだっていうふうに説明したいんで、悪い時はあえて何も言わない(苦笑) 今週はぜひここがよくなったっていう技術的な報告をできるようにがんばりますね。

 さて、昨日の続き。トーナメントのためにゴルフ場が一般営業ができないから、ゴルフ場の収益がなくなってしまうから、それではトーナメントはできない、ゴルフ場の儲けを削ってまでトーナメントはやれない、そういうことであればトーナメントは今のまま変わらないね。

 常にやる側にも見る側にも不満が残る。っていう感じで不満が残る中では絶対に、人の心に残るスポーツとしての感動的なドラマといえるような、感動と言われる場面は残らない。

 選手にとっても見る側にとっても人気があるトーナメント、太平洋VISAマスターズダンロップフェニックス。なぜこの2つのトーナメントがダントツに飛び抜けてるか。これはやっぱりコース整備、要するにより選手にフェアにやってもらいたい、満足できるようなフィールドを与えたいというこのコンセプトが、この2つのトーナメントは飛び抜けてすばらしいんだ。だからフェニックスにしても太平洋にしてもいい場面が残る。

 それからもう1つはその国のナショナルオープン。やはりJGAが力を入れて、日本のナショナルオープンを開くためにあらゆる団体の人達が、ボランティアも含めて協力してくる。ゴルフ場も協力してくる。日本オープンが今年うちのゴルフ場であるとなれば、やはりゴルフ場もそれに対して万全の準備をしてくるよね。

 だけど一般トーナメントっていうのはそうはいかない。だからその中でいいゲームをしてくれって選手に求められても、それだけ荒れたフィールドとなると名場面はできないんだね。


(1999.4.30掲載)

本当によくなる日

 例えばこう考えてみよう。陸上競技で100メートルのトラック競技があるよね。あれをいまだに土のまんまでやってごらんなさいと。土のまんまでいくら整備しても、100メートル10秒切れない。まして長距離の、トラックを何周もする競技で使う内側のレーンを取ったら、それだけ路面が荒れてるんだから、それだけ数字は悪くなるよね。

 ところがあのトラック競技は新しい素材で、インコースからアウトコースまで全部同じ条件になってるよね。だから100メートルを10秒を切るような、すごいスピードになってきたわけだ。

 だから僕は思うんだ。東京オリンピックでヘイズ10秒フラットを出したけど、あれがもしいまと同じグラウンドの状態だったら、絶対10秒切ってたと思う。あの時ヘイズは抗議したんだよね。長距離の選手がトラックを何周も回ってる内側のレーンを走らせないでくれと。もっとアウトサイドを使わせてくれたら100メートル10秒切る自信があるって彼はアピールしたんだ。

 それが受け入れられなくて、そのまま走って10秒フラットになってしまったんだけど、結局、彼があの場面で10秒切る記録、例えば9秒98でもいいや、それを東京オリンピックで出してたら、やっぱりこれはすごいことだよね。人類にとって初めて10秒を切った、一つのドラマなわけだ。

 だからこれはゴルフにも言えるんだ。マスターズでなぜあれだけのドラマが起こるのかっていうのは、それだけのフィールドに全員が全精力を使ってる。これはすごいことだよね。日本のトーナメントでもしそれが非常に近いとすれば、太平洋VISAマスターズと特にダンロップフェニックスだろう。

 だから他のトーナメントでも、やっぱりそれを変えないと、これから先のゴルフトーナメントっていうのが変わる速度っていうのかな、遅くなるだろうね。まあよくなってはきてるんだけど、本当によくなる日がくるかどうかは疑問だよね。まあそんなようなことがマスターズが終わって帰ってきて感じたことだったね。